弁護士 羽場知世
働き方改革関連法に関する第3回目の情報配信をさせていただきます。今回のトピックは正規・非正規社員間の不合理な待遇差の禁止です。
改正の概要
1. 概要
正社員と非正規社員の間で不合理な待遇差を設けることは、従前から禁止されていましたが、法改正により、更に規定が整備されました。
2. 不合理な待遇差をなくすための規定の整備
(1) パートタイム労働者・有期雇用労働者
- ① 正規・非正規社員間の不合理な差別を禁止する均衡待遇規定につき、各待遇の性質・目的に照らして適切と認められるべき事情を考慮して判断されるべき旨が明確化されました。
- ② 職務内容、職務内容・配置の変更範囲が正規・非正規社員間で同じ場合に、雇用形態を理由として正規社員との間に待遇差を設けることを禁止する均等待遇規定につき、パートタイム労働者に加え、有期雇用労働者が新たな対象として追加されました。
(2) 派遣労働者
【改正前】
派遣労働者と派遣先労働者の待遇差の是正につき配慮義務しかない。
【改正後】
派遣労働者の待遇につき、以下のいずれかの確保が派遣元事業者の法的義務となった。
- ① 派遣先の労働者との均等・均衡待遇(※派遣元事業者が①を選択した場合、派遣先事業者は、派遣元事業者に対し、派遣先の通常の労働者の待遇に関する情報を開示しなければなりません。)
- ② 派遣元事業主・労働者間の労使協定に基づく待遇
(3) 不合理な待遇差についてのガイドラインの制定
どのような待遇差が不合理と判断されるかについて、待遇ごとに具体例を示したガイドラインが制定・公表されました。
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000469932.pdf
3. 待遇の説明義務
非正規社員は、正規社員との待遇差の内容や理由等について、事業主(派遣の場合は派遣元)に対して説明を求めることができるようになりました。また、雇い入れ時の待遇の説明義務の対象が、有期雇用労働者に拡張されました。改正前後の比較は、下記の表のとおりです。
(厚生労働省「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保~同一企業内における正社員・非正規社員間の不合理な待遇差の解消~(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の改正)」より抜粋)
施行日
2020年4月1日
中小企業は2021年4月1日
実務上の留意点
これまでと同様、正社員・非正規社員の間で、待遇において不合理な差別を行うことは禁止されます。どのような待遇差が不合理な差別にあたるかについてガイドラインが整備されましたので、ご確認ください。
改正の詳細については、以下のリーフレット等をご参照ください。
https://jsite.mhlw.go.jp/tottori-roudoukyoku/content/contents/d_444.pdf
https://jsite.mhlw.go.jp/tottori-roudoukyoku/content/contents/e_555.pdf