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民法(債権法)改正について―⑤請負契約、賃貸借契約―

2020年2月4日
弁護士 仲谷康

さて、本年4月1日より、日本の契約等に関する最も基本的なルールである「民法(債権法)」が大きく変わるため、情報配信をさせていただいております。

民法(債権法)改正に関する最後の配信となる第5回のトピックは、請負契約と賃貸借契約に関する改正です。

改正の概要

これまで配信させていただいたように、今回の改正では、民法制定以来約120年間の社会経済の変化に対応するために、実質的なルールの変更が多々実施されていますが、併せて、民法のルールをより分かりやすいものとするための改正も実施されています。

今回は、これら改正のうち、皆様の業務と関係しやすい請負契約と賃貸借契約に関する改正事項の一部をご紹介させていただきます。

1. 請負契約に関する改正
(1) 仕事が中途で終わった場合の報酬請求

これまでの民法では、請負の報酬は、完成した仕事の結果に対し支払われるものとされており、仕事が中途で終わった場合の報酬について、ルールを定めていませんでした。

今回の改正により、以下の内容が明確化されました。

  • 仕事を完成することができなくなった場合や、仕事の完成前に契約が解除された場合であっても、中途の結果のうち可分な部分によって注文者が利益を受けるときは、その利益の割合に応じて報酬の請求をすることができる。
  • 仕事を完成することができなかったことについて注文者に帰責事由がある場合は、報酬の全額を請求することができる
(2) 担保責任

上記(1)では請負人に有利な内容が明確化されましたが、仕事の目的物に欠陥(瑕疵)があった場合の担保責任については、請負人に不利な改正がなされています。今回の改正により、仕事の目的物に欠陥(瑕疵)があった場合に注文者が請求可能な内容が拡大され、注文者の権利の期間制限も見直されました。

まず、注文者が請求可能な内容について、これまでの民法では、修理の請求や損害賠償請求は可能であるとされていましたが、代金減額請求はできず、土地工作物(建物等)の建築請負では契約解除ができないとされていました。しかし、今回の改正により、代金減額請求が可能であることが明確化され、土地工作物(建物等)の建築請負であっても契約解除が可能であるとされました。

また、注文者の権利の期間制限について、これまでの民法では、原則として目的物の引渡し等から1年以内(建物等の建築請負では引渡しから5年以内)の権利行使が必要とされていました。しかし、今回の改正により、売買契約と同様、注文者は契約に適合しないことを知ってから1年以内にその旨の通知をすれば足りるとされました。

2. 賃貸借契約に関する改正
(1) 原状回復の範囲

賃貸借契約終了時には、賃借物を原状回復しなければなりませんが、その範囲等について、これまでの民法はルールを定めていませんでした。

今回の改正により、賃借物に損傷が生じた場合であっても、通常損耗(賃借物の通常の使用収益によって生じた損耗)や経年変化については、賃借人は原状回復義務を負わないというルールが明確化されました(下図:法務省民事局「民法(債権関係)の改正に関する説明資料-主な改正事項-」58頁より抜粋)。

通常損耗・経年変化の例
(2) 敷金

これまでの民法には、敷金に関する規定もありませんでした。

今回の改正により、①名目の如何を問わず、賃料債務等を担保する目的で賃借人が賃貸人に交付する金銭は全て民法上の敷金であるとして敷金の定義が明確化され、②敷金の返還時期(賃貸借契約が終了し賃貸物の返還を受けたとき等)と返還の範囲(未払債務を控除した残額)に関するルールも明確化されました。

3. 経過措置

以上のような請負契約と賃貸借契約に関する新たなルールは、原則として、施行日(2020年4月1日)以後に締結された契約について適用され、施行日前に締結された契約には改正前の民法が適用されます。

今回の改正により、従前の契約書ではカバーしきれないリスクが新たに発生している可能性がございます。今後、新たに契約を締結される際には、その内容について、事前に弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

なお、今回の改正の詳細については、法務省のホームページ等でも解説がなされておりますのでご参照ください。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html

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